胡蝶花から極道の世界

「胡蝶花」は全て別世界だった。

藤原さんがお店の色んなキャストを席に連れてきてくれた。2時間半8万円。高いとは思わなかった。それから毎週のように通った。ただ、指名なしで8万円である。お店にとっては席を埋めるという意味では私もお客だが、女の子にとっては何ら金にならないフリーの「人」だった。

そんな中でも藤原さんは、指名客と指名客の間に何人もの看板キャストを付けてくれたりもした。多分、30歳にもならない私が自腹で1人で通って来るのが物珍しかったんだと思う。彼女達との会話、為になったし、楽しかった。他では味わえないものだった。

そんな中で、あるキャストが「あんた、いいもん持っているんだから仕事本気でやってみな。そしててっぺん目指しな」って言ってくれた。その彼女は同時に「トップ目指すんだったら、くだらないと思うかもしれないけど、やくざ映画見てみな。そんで勉強しな」って話をしてくれた。「他のうちに来るようなお客さんにはもう必要ないだろうから、こんな話しないんだけどね」っていう言葉もつけてだった。

自宅療養中、毎日マンションの一階にあるレンタルビデオ屋に通って貪るように観た。「ゴッドファーザー」「極道の妻たち」「仁義なき男シリーズ」「その男凶暴につき」、ただ一番はまったのが「日本の首領」だった。ゴミの俺だったから、めちゃ響いた。

・何ができるかではなく、何をすべきか

・すじはどこにあるのか

・負ける喧嘩はするな、喧嘩はどんな手を使っても勝てる喧嘩をしろ

・妥協は決してするな

今までの人生とは真逆だった。