全否定

当時、私が一緒に働くべき市場部門は銀行の中では極めて特殊な部門だった。

そこは、所謂、専門職と言われる人が多く、大部分が東大、京大、東工大の理数系学部出身者か院卒で入行以来営業店を経験せず勤務している連中だった。その部門を管理、効率運用させるのが私の仕事であった。

 当初の半年は、とりあえず手探り期間という感じで過ごせた面があったが、自宅療養からの復帰以後はもうそんなお試し期間は終わっていた。

 気持ちを入れ替えようと藻掻いていたが完全空回りだった。専門的な仕事なので、所謂本で学ぶということにも限界があったし、市場部門の連中には常識であることが私には全く理解できない毎日だった。仕事も全くできず、人格も全否定されながら毎日を送っていた。同じ部門の同僚にも相手にされなかった。その頃は、毎朝、固形物がないものを何度も吐いていた。それでも、会社に行った。

 絶望というのはどういう感覚かわからない。ただ、その時は、絶望という感覚ではなかった。怒りという感覚でもない。でも、何かを変えなきゃというより、がむしゃらというより、何かちゃんとしてみようという感覚だった。それだけだった。