天国から地獄

ある日、フロントの方と一緒に、お客様と取引条件を詰める為の訪問の機会があった。そのお客様は政府系金融機関で、従来は債券、FX、金利スワップの取引を行っている先だった。

そのお客様に新しくMTMの通貨スワップを導入するというものだった。通常のお客様との間でも頻繁に取引されている商品であり、時価換算の方法で議論になることはあったが、外貨の決済方法が特殊なだけで難しいものではなかった。

会社に戻り、上司には時価換算の話だけをして、詳細は決済や約定書を作成する部署に話をして、他の業務もこなして帰宅した。

数日後、その政府系金融機関の担当者から2時過ぎに電話がかかってきた。

先方が「二日前に10億ドル相当の通貨スワップを約定しました。私たちは既に10億ドル相当の円貨額をお宅に払ってます。ただ、いまだに10億ドル受領してません。もう払っていただいてますか?至急確認してください。」というものだった。

血の気が引いた。同時にバックオフィスに対しては、怒りしかなかった。

電話を切ると、すぐにバックオフィスに電話した。

電話にでた彼は、「支払い済です。こっちは素人じゃないんですから、向こうの確認ミスではないですか、忙しい時間なので、もう電話切ります。」

そんなはずない、何かが違う。電話口で頭を抱えた。