時間は、2時20分頃になっていた。決済は、3時までだった。
政府系金融機関の担当者に再度確認しようと受話器を握ったとき、なんとなく「もやもや」したものを感じた。もやもやの綻びに気が付いた時には、受話器を握っていた。ただ、押された電話番号は、お客様のものではなかった。その時、背後には、上司も部長もいつもと違った空気を感じたようで立っていた。
受話器の向こうは、バックオフィスの彼だった。
彼「またですか?払いましたよ。」
私「どこに払った?」
彼「いつも通りの○○銀行のNY支店ですよ」
私「違う。通貨スワップの元本交換はドルでも日本国内決済だ。顧客との約定書にも書いてあるだろう?」
彼「え、そんな今更言われても」
私「(何をいまさら・・・)。今から国内で10億ドル払えるか?」
彼「もう既に支払い済みのお金が戻ってこないと払えません。クレジットリミット超えてしまいます。でも、先方で、NYから国内に振り替えてもらえば良いんじゃないですか。」
私「そんなんじゃ、間に合わない。それになんで客にそんなことお願いできるか。てめぇ、商売わかっているんか。後は、こっちで話す。」
その時の私は、外貨決済について漠然とした知識しかもっていなかった。
たぶん顔面蒼白になっていたと思う。
そんな中どうして良いかわからず席に座り込んでしまった時に、上司と部長が、もうすでに話をはじめていた声が聞こえた。