ほとんどのメガバンクでは、入社7~8年程度で最初の本格的出世競争の結果が言い渡される。所謂、平社員から管理職への昇格人事の発表である。バブル期には、入社8年ほどで8割程度は昇格できていたらしいが、当時は4割~5割位まで落ちていた。
私は、昇格できなかった。自宅療養から復帰するまでは、ずっと真剣に働いてこなかったのでしょうがないかなと表面では思っていたが、ショックだった。
新宿の支店時代は、真面目に働いてはなかったが成績は残していた。国際部門でも、大きな失敗はしていない。
でも、「昇格」できなかった。
当時は、すでに自宅療養から復帰し、自分自身で考え、前向きに色々とやろうとしていた頃だった。借金は親に返済してもらって完済していたし、遊ぶこともなかった。ただ、昇格するのとしないのでは、年収でも200万円程度違う。心がくじけかかった、でも実際問題、入社以来何もやってなかったんだと自分に言い聞かせた。
その昇格辞令の時に上司からは特に何も言われなかった。
それからしばらくして、色々仕事らしい事もちゃんと軌道に乗り始め、仕事が面白いと思い始めた頃、上司から呼び出された。
「お前は、人事部の評価が低すぎる。少々がんばっても難しい位、昇格には厳しい評価だよ。人事部の評価を変えるのは大変だぞ。でも、まだ30そこそこだろ。変えようと思えば変えられると思うよ」
それだけだった。 ただ、その日の上司の佇まい、しゃべり方。いつもと違った。初めてその上司の言葉に疑いを持った。