そんな中、ある大手外資系投資銀行のManager職のポジションが空いているとの連絡がメールであった。
外資系の場合、JOB DESCRIPTIONは、事前に明確になっており、そこに記載のない業務は原則職務範疇外であるということでお互いの関係はなりたっていた。今回の内容は、半分以上が未経験の職務であり、現在の役職とは全くつりあわないポストだったので無理だと思っていた。そのため、しばらく放っておいた。すると、エージェントの担当者から電話がかかってきた。
見事に彼に叱られた。
「チャレンジするためにあなたはうちを頼ってきた。今でもあなたが務めている会社はすごい会社です。不満があるかもしれないけど安定もしている。でもあなたは新たな可能性を探そうとしている。この会社に応募して、落ちたら、あなたに何かダメージありますか。何を怖がっているのですか?挑戦すべきだ」と言ってくれた。
破れかぶれで受けたので、全てを包み隠さず話せた。本来、外資系では家族のことや個人的事情などは、質問してもいけないし、回答もしないとういうのが暗黙のルールであるのだが、バツ2であること、以前は全く仕事の面白さを感じていなかったこと、今回の募集ポジションの中で経験がない業務、英語も自信がないことも含めて全て話をした。
海外との電話インタビューも含めて15人程度の人に会った。そして、3カ月後にはオファーレターを頂くことができた。
後日、入社してから話を聞くと、最初に会った二人で採用は決まっていたそうだ。
その二人が日本の実質責任者だった。そして、彼らは教えてくれた。
「○○君の場合、目新しかったし、面白そうと思ったので採用した。ダメだったら、首にすればいいしね。ただ、外資系って、この業界を転々としているやつばかりで、採用の募集かけても、こいつ知っている、という奴らばっかりなんだよね。だから日本の会社から挑戦してくる奴ってなかなかいないんだよね。ちょうど、会社変えたかったしね。ただ、ヘッドカウントの予算の関係でオファーレターを出すのに日にちを要してしまうので、それ以後のインタビューを設定した。遅くなってごめん。」
オファーレターをもらった日には、元上司に電話をかけた。そして、翌日、銀行に出社して部長に1カ月半後の退職の旨を伝えた。
元上司も部長も喜んでくれた。人事部からあくまで形だけの引き留めがあっただけだった。退職が決まり、残り1カ月半引継ぎをしながら色々なことを考えていた。