日系から外資。不安しかない

新しい会社での最初の出勤日前夜。緊張感はあった。高揚感もあったと思う。何を今更と思われるかもしれないが、戸惑いもあった。ただ、前日の夜は一人で「やくざ映画」を見ながら、飲んで寝た。気合を入れる時は、いつもやくざ映画だ。

出社初日、同じ日が初日の転職組が部内で私を含めて三人いた。一人は20代前半の女性、もう一人は私と同年代の女性で、二人とも外資からの転職組だった。

私は、以前の感覚でスーツで行ったのだが、全員がラフな格好で、完全に浮いている存在になってしまった。その恰好で関係部署の挨拶まわりに行くと、皆から「あー、日系から来たのね」とか「珍しいね」とかそんな反応で気恥ずかしい思いを初日からする羽目に陥ってしまった。

私がManagerとして担当するチームは、私を含めて10人のチームで、元々在籍していたメガバンクでは、100人以上で行っているような業務を、私のチーム10人とアジア各国のチームと共同で業務にあたるという役割だった。

私の仕事は、チームの取りまとめで、ミーティングの参加などは定期的に発生するが、チームメンバーのように個々のルーティンワークを持っているわけではなかった。ただ、そんな中、最初の失敗をしてしまった。

それは、週一回の電話でのグローバルミーティングがあった時だった。私が最初の参加ということで、発言を促されたのだが、何をしゃべって良いかわからなかったので、参加しているのに、何も答えず、沈黙を貫き、最後まで単に聞いていた。ミーティングオーガナイザーは、多分今日は欠席なのだろうという話をしたが、何もできなかった。今では、スカイプやズームでのミーティングで「参加・不参加」が明確になってしまいそんなこと出来ないが。

その時は躊躇したのかもしれないが、何かの単語を発するということが全くできないという状態に陥ってしまった。英語ではなく、日本語でも言葉を発することができなかったと思う。Ⅰ時間、単に受話器を握りしめ、話されている内容も殆ど頭にはいらず、背中を丸め、汗もたらたらという何とも恰好が悪い姿だった。だが、これが、現実だった。俺は何をやっているんだ。