そんなある日、トレーダーのアシスタントから声をかけられた。
「CSA契約ってどの程度理解してますか」
それに対して、今まで自分で学んだことを一通り説明した。アシスタントの人は、その場でトレーダーのヘッドを呼んでくれた。
初めて話す機会だった。緊張? 高揚感? 怖さ?
何がそうしているのかわからなかったが、身体じゅうからの汗がとまらなかった。喉だけがカラカラだった。
彼は言った。
「君が○○君?さっき、CSAについて質問受けたと思うけど、もう一回君が持っている知識を全部話して」
私は答えた。
「必要があれば、レポートでまとめてきますが。」
即座に彼はそんな私の言葉を遮った。
「纏まってなくても構わないから、今、話をして」
私は、試されていると思った。
ISDAにおけるCSAの位置づけ、MARKET商品におけるCSA契約の目的及び重要性、MARK to MARKET算出時の問題点、事務効率上の問題点等を含めて私が知っていることの大部分について話すことができたと思う。ただ、当時、CSAの契約そのものは、フロントオフィスで対応していたため、あくまで机上のものでしかなかったが。
説明を終えると、次の言葉だけ残して、去っていった。 「わかった、ありがとう。次長(私の上司)に話をしておいて」