別れ

上司は、前に記載した通り、無口で黙々と仕事をする人だった。

部内でも群れる人ではなく、国内の銀行の役職者では極めて珍しいタイプの人だった。
そして、上司と出会って3年位した頃、再度、上司から呼ばれた。

「俺は、来月退社する。お前も、今後どうやって生きるか、一回考えてみな。」

前回の昇格の時の言葉とは違った。彼、本来の言葉で語ってくれたと思う。

上司は、別の金融機関への転職だった。

上司自身のことについては、彼が転職していなくなるまでは、「抜群な知識量。ただ、英語が出来ない。数学・PCについては専門家」ということ以外、詳しい事は何も知らなかった。彼の転職以降、あらゆる点で部長が頼ってくれたことにより、部長と親しく話すようになり、上司の事も徐々にわかるようになった。

上司は具体的にどこの会社に転職するか決して話をしてくれなかったが、ある日、部長が飲みに誘ってくれて、上司から部長に次の事を託されて退職していったことを教えてくれた。

上司から部長に話をされた内容は、「この話は、部長だけにしてください。彼(私)は、この1年以上ずっと頑張ってます。ただ、今の人事評価では、この会社にいる限りは彼は不幸です。このまま頑張っていると部長が思うのであれば、私の新しい会社の勤務先の電話を彼に伝えて下さい。新しい会社で採用することは出来ないと思いますが、相談に乗りたいと思う。」ということだった。

彼が、転職した会社は、外資系の金融機関だった。それもトップクラスというのではなく、トップの金融機関だった。

自分自身、今の状態でも仕事がどんどん面白くなっている。しかも、部長を含めた部内の人からの信頼はどんどんあがってきた。知識が付けばつくほど、仕事は楽になっていった。ただ、人事部の人事評価が低い、給料が安い。日本の会社では永遠に変えることが出来ない深みにはまっていたということは自分でもわかっていた。

一応、両親には話をしてみた。相談しようとは思わなかった。ただ、話をしておくことが筋だと思っていた。予想通り、両親ともに反対だった。どこにいっても名前が知られている会社、失業することはないだろう、そんな事が発せられた。わかってもらおうとは更々思っていなかったが、話すことによりとりあえず筋は通した。

そして、すぐに元上司に連絡をとった。私自身には全く迷いがなかった

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